「生活者の視点から生きた知識を創る体験的社会科研修」とは何か 2

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3.聞き取りを重要視する

昭和59年に私は夏休みの研修で

三浦半島の農業に関する地域調査をしたことがある。

三浦半島の農業の特色は沖合に黒潮が流れ、

その温暖な気候(12月の平均気温は九州の宮崎市とほぼ同じ)を

利用して年三作(同じ土地に夏にスイカ、秋から冬にかけて大根、

冬から春かけてキャベツを栽培する。)の輪作で有名だった。

ある農家は、8月の台風でスイカ畑が直撃を受け、

商品にならないようなたくさんのスイカの実を目の当たりにしながら

農家の方は暗い表情を見せることなく、

聞き取りに応じてくれた。

その結果、スイカ(裏作)がだめでも

大根、キャベツがあるということがわかり、

農業従事者に対して市場へ出荷する生産者としての立場だけではなく

一農家の生活者としての顔があることを実感できた。

聞き取りはなにも地域調査や研究論文を書くために

おこなうというおおげさなものではなく、

ふと疑問に思ったことや知りたいこと、

教科書やインターネットにも載っていない生の最新情報や生きた知識を

地元の生活者や関係機関から得て、

そこから新しい教材や授業で使えるネタを見出していくことではないかと思う。

また身近な地域の学習において、

このような一教師の聞き取り体験を実例の一つとして生徒の前に示すことができる。

 

私はこの年の冬休みの課題として、

近くの山村に行き、高齢者に過疎化に関する聞き取りを行うことにした。

人口減少の波は山間部や離島で特に激しく押し寄せている。

今回の5日間の研修において

大都市に人口が集中している傾向が顕著になっていることを

実感したが、

これから先、比較的人口が減少傾向にある大都市周辺の町や村にも

過疎化の問題が押し寄せているのではないか、

私はそれを確かめたくなり、

2020年の1月4日(土)に

東京都近郊の埼玉県飯能市の中藤地区を訪れた。

飯能駅からバスで50分ほどの山間部に集落が点在する。高齢化率が高い。)

終点のバス停を降り、

徒歩1時間20分程の山の中にある

寺院の初詣客を相手にする土産物屋の店員から

次の客が来るまでの間の約10分間、聞き取ることができた。

時程・・・飯能発8:30  中沢9:20  土産物屋 10:45~10:55

 

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飯能駅前駅ビルとロータリー            駅ビル内ファストフードの店2020年1月撮影

私の若いころまったくの田舎駅で日曜の朝はハイキング客でごったがえしていた。

 

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中沢終点バス停付近

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子の権現への標識と小さな渓谷の道

 

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  厳寒期なので道端に塩カル置き場がある     子の権現は神社ではなく天台宗の山寺 

                     神仏習合の寺院として知られる標高スカイツリー     と同じくらいの640m  2020年1月撮影

 

 

聞き取りの主な内容

・この付近はイノシシが出没。

ハンターからイノシシの肉をいただくことがある。たいへん美味しい。

・山林の材木は安くて利益が少ない。

・渓流の漁はほとんど獲れない40年前は魚がけっこうとれて売ることができた。

・山村は高齢者の一人暮らしが多い。

週に一度デリバリーがあり必要な食料を配達してくれる。

・市がバスを買い上げ運行している。

一日に4本しか運行していない。

・昔はバスの便が良かった。

生徒も学生もけっこう利用していた。