「生活者の視点から生きた知識を創る体験的社会科研修」とは何か 6

ブログランキング・にほんブログ村へ

 

生きた知識をどのように習得させ、活用させるか

私の考えはいたってシンプルである、

教える教材の中身(生きた知識が核)が充実していれば、

基本的にはその教師に合った授業方法で展開すれば良い

という考えである。

ただし私の場合の授業形態は一斉授業が基本型で、

前述した説明力の強化を最重点項目として

いつも授業づくりに励んできた。              

その生きた知識を核とする授業内容であるが、

それをいかに効果的に伝えるかは教師の情熱次第だと思っている。

その情熱とは生徒より何倍も学ぶ意欲があり、

純粋に教えたいという自信にあふれた姿勢のことである。

それがどのようにして生み出されるかであるが、

机の上で教材研究をするだけではなく、

上に取り上げたような体験的研修を地道に積み重ねていくことが

いちばんの近道ではないかと思う。

しかし、一斉授業では知識を習得させながらも、

今回の新学習指導要領でも強調されている

その知識を活用させる取り組みも重要になってくる。

実際に、私の場合過去に、

思考をうながす発問をし、時にお互いに考えさせ、

話し合う場をつくらせるなどして

思考力、表現力を高める工夫につとめた授業もおこなってみた。

だが、その授業はけっして満足のいくものとはならなかった。

「私たちはどうすべきか」といった価値判断をともなうような問いに対しての時は

特にそうだった。

生徒が不十分な語彙力と背景的知識、断片的知識だけで、

あるいは知識量が圧倒的に少ない状態で

そのような取り組みをすることに 

教師の私自身が限界を感じてしまったのかもしれない。

 

その知識量とは授業の中で未知の世界を知る喜び、

生活に結び付く知識を得ることに面白さを感じ、

しだいに知的好奇心も刺激され、

授業外でも自らすすんで本を利用して調べ、

学問的探究心も育まれ、

読書することによって積み重ねられていく生きた知識の量のことである。

本当の知識の習得とはそのような状況におかれて可能となるのではないか。

そのことをもって様々な社会的事象に対して、

自ら課題を発見し、

より多面的多角的に考え、社会的見方、考え方が深められるような素地が育てられる。

そのなかで知識が活用され、

未知の状況にも対応できる思考力や表現力を高めていくことができるのではないか。

従ってこのような知識習得のためには

どうしても授業外で、生徒が読書の機会を設け、

読書の習慣が身につくような手立てが必要になってくる。

現在スマホでのゲームやSNSの使用が普及し年々若者だけでなく

全般的に大人も読書しなくなっている風潮の中で

社会科教師ができることはいったい何だろうか。

私は今年の夏休み前に歴史関係の本を

一冊どんな本でも良いから選び(漫画、絵本、写真集、新書、文庫など)

B4版の一枚の用紙に新聞形式で読書感想を含め、

読んだ本の内容に関する記事を自由に作成する課題を出した。

二学期に入り、提出された生徒の読書感想を一人一人読み進めている間、

感心することしきりで大変に驚いてしまった。

大人向けやジュニア向けの丹念に編集された歴史関係の本を選んでいる生徒が予想外に多く、

その多くが「ほかの本も読んでみたい」、「もっと多くのことを知りたい、調べたい。」

と発展性のある感想を記していていたことである。

 

2年生の夏休みに、当初「これはいきなり半強制的かな」

と思ったこの夏休みの課題であるが、

今ふりかえると、その貴重な読書の機会を与えることができたこと、

また読書感想文ではなく、

歴史新聞方式にして自由にまとめさせたことも良かった。

自分の思考を働かせて

自分の表現でオリジナルな紙面を作成する生徒が予想外に多く、

生徒の無限の可能性を感じ取ることができ、

これは嬉しい誤算だった。

実際に歴史の本を読んだ生徒の感想をいくつか紹介する。

・「教科書にのっていないことがたくさんあって

勉強しているうちに江戸時代について学ぶのが楽しくなった。」

・「これからも歴史のことをたくさん知って

過去と現在のつながりをさらに深く知ることができたらと思う。」

・「教科書にのっていない興味深い裏話が多くとても面白かった。」

・「これを機に歴史に興味をもつことができ、

江戸時代だけでなく他の時代のことももっと知りたいと思いました。」

・「歴史新聞を作ったことによって

今まであまり好きでなかった歴史にも興味をもつことができました。」

 

f:id:kurobekun:20210326135110j:plain
f:id:kurobekun:20210326135551j:plain
f:id:kurobekun:20210326135349j:plain
f:id:kurobekun:20210326135210j:plain

歴史新聞 個人情報でもあるのでかなり縮小して載せました。 2020年8月撮影